「どー考えても不公平だよ。」
 ヤツの第一声はそれだった。



 たまの休日家で小説でも読もうと思っていた矢先、いきなり電話が掛かってきて呼び出された。
 "駅前の喫茶店で待ってるから。"
 それだけ言うと、俺の都合も聞かず、ヤツは電話を切った。
 どういうつもりかは分からなかったが、律儀な俺はヤツの待つ喫茶店に向かっていたのだった。



「どー考えても不公平だよ!」
 大きなチョコパフェを目の前にして、ヤツ ―黒羽快斗が言う。
「なにが不公平だって言うんだよ。」
 俺 ―工藤新一は出てきたコーヒーを口に運びながら言った。
「だからさ、俺もお前も好きなことやってんのに、何でお前はいい待遇受けて、逆に俺がたっくさん金使ってるのか、って事だよ。」
「あぁ?」
「だってさ、お前は事件解決したヒーローだから?皆から喜ばれる存在だろ?」
「まぁ、探偵だしなー。」
「だけど俺は苦労して盗んだ宝石、全部返してんだぜ?その上、仕掛けとか全部自腹だし。」
「じゃ、盗んだもの売り飛ばして金作れば?」
「盗むのが目的じゃないんだよ!」
「んなこと知ってる。」
「……」
「世の中の役に立ってるか、たってないかの違いだろ?」
 段々退屈になってきた俺は、持参した推理小説を広げた。
「そんなこと、百も承知だよ。」
 ヤツは目の前のパフェの山を切り崩しながら言う。
「分かってんだったらそんなことわざわざ言わなくたっていいだろ?」
「んー。頭じゃ理解できるんだけど、どーも納得できないんだよなー。」
「なんだそれ。」
「実際、俺のお陰で新聞や情報誌が売れてるトコもあるワケだろ?」
「キッドは派手だしなー。」
「だけど、"モデル料"は一円も入ってこねーじゃん。」
「それは俺も同じだっての。」
「いーや。違うね。お前はいいじゃんか。依頼がどんどん入ってくるだろ?」
「まあね。」
「そらみろ!やっぱり俺のが損してる!俺なんていくら名前が売れたところで犯行現場に人が集って動きにくくなるだけだし。」
「嬉しいくせに。」
「あ、分かった?」
「バレバレ。」
「だけどよ、そのためにパフォーマンスも必要になるわけだろ?」
「パフォーマンス?」
「有名税っての?せっかくきてくれたお客様に、楽しんでもらわなきゃじゃんか。」
「……」
「大阪のときなんか花火まで打ち上げちまった。あれ、ソートー金掛かってんだぜ?」
「…。なんかさ、お前絶対金の使い方間違ってるぜ?」
「なんでさ。」
「あの後変電所も爆破したろ?復旧は早かったけど、結構税金使ったらしいぜ?」
「ははははー。そんなこともあったっけな。」
「ドロボーするのは勝手だけどよ。一般市民は巻き添えにするなよ。」
「あれは…まー、俺も流石にやりすぎたと思ったけど。」
「じゃーなんで…」
「だって映画だったろ?」
「は?」
「のび太が勇敢になったり、ジャイアンが良い奴になったりするんだぜ?俺もなんか変わらなきゃと思ったからさー。」
「あきれた。なんだ、その理屈。」

「あーあ。せめて"黒羽快斗"が有名になれば、マジックショーでも開いて売り上げ取れるのに。」
「じゃー、"黒羽快斗"が盗めばいいんじゃねー?」
「…すぐ捕まるよ!てか新一、推理小説なんて読んでないで真面目に聞けよ!」
「はいはい。ちゃんと聞いてるから話なさーい。」
「……それの何処が真面目だっつーの!」
「てゆーかさ、お前はいったい何が言いたいわけ?こんな所まで人呼び出しといて。怪盗は儲からないから探偵に転職希望?」
「馬鹿言え。俺がやりたいのはそんな事じゃないんでね。」
「そんなことって言うなよ。」
「いーや、言うね!"そんなこと""そんなこと""そんなこと"!」
「はいはい。たかが批評家ですよー。」
「分かれば宜しい。」
「へー。んじゃ、俺帰って良い?」
「ちょっと待て!俺が言いたい事、まだ言ってない!」
「何だよ。」
「だーかーら!探偵は儲からない怪盗さんに、たまには奉仕しなさい!」
「奉仕?」
「うん。だから、ここの会計、よろしくねv」
「おまっ、待て。始めっからそのつもりで…」
「それでは、今度は現場で会えることを楽しみにしていますよ。」
 ヤツは、"夜の顔"でそういうと、一瞬のうちに一輪の花になった。
「あんのやろー!自分ばっかり高いもの食っといて!立派な食い逃げだぞ!」
 あんなに愚痴をこぼされて、挙句の果てに食い逃げだと?
 俺は思わず、ヤツの残した花を握り締める。
 と、その拳の中に違和感を感じ、右手を開く。
 するとそこには一枚の紙切れ。




 ――― あいにく俺は、怪盗なんでね ―――






 ―後日、キッドの犯行予告現場に、やけに燃えた工藤新一探偵が居たとか、いなかったとか。


END----


あとがき
快斗と新一。なぜか知り合い、友達設定です。
ていうか、話してばっかりですね。
自分は頭の中でイメージしてるから分かるけど、
普通に読んでちゃんと誰が言ってるか分かるか不安。
一応順番にはなってるんですが(^^;

で、この話で一番書きたかったのはのび太とジャイアンのくだり…
って、なんでやねん!


2003/4/5 完成
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