バレンタインデー
「……これ!」
「へ?」
急に視界を青い紙袋にさえぎられ、ゴードンは素っ頓狂な声を出した。
それは2月のある昼下がりの事。
南太平洋に浮かぶトレーシーアイランドは、徐々に和らいできたものの、まだまだ暑い日々が続いていた。
ゴードンは真昼間から自室のベットの横になり、天井を見つめている。
その日も救助要請があり、スコットとバージルは出動中。
アランは宇宙ステーション勤務中だし、
ブレインズとミンミンは何か新しいメカの開発で朝から研究室に詰めていた。
おばあちゃんとパパはふたりで何か話をしてたっけ。
―そう、ゴードンは暇だったのだ。
よっぽど外で泳いでこようかとも思ったが、一号が出動してるからプールは使えない
(帰還時に排気ガス吹っかけられたらたまったもんじゃない)し、
今日の海は荒れていたから海で泳ぐのも不可能だった。
(…あーあ、ジョンも相手してくれないし…)
せっかくジョンが宇宙ステーションから地球に戻ってきているのにちっとも相手にしてもらえず、
ゴードンは少々、いや、おおいにジョンに不満を感じていた。
ジョンが戻って半月になるだろうか。
彼と来たら帰って来たその日から毎日毎日部屋に閉じこもって何かの勉強をしていた。
『そんなこと、宇宙ステーションでもできるだろ!?』
はじめはそう言って近づいたこともあったが、そのたびに
『頼むから一人にしてくれ!』
と怒鳴られたのだった。
(なにも怒鳴らなくたって良いのに…。なんだよ…)
ゴードンは3ヶ月間、ずっとジョンが帰ってくるのを待っていたのに。
アランとミンミンを横目に、いつもジョンの居る星空を一途に眺めていたのに。
『ジョンの事が好きなんだ!』
意を決して気持ちを伝えたのは、この前ジョンが宇宙へ帰る、前の晩だった。
そのときジョンは、一瞬驚いたようだったがすぐに優しい笑顔を浮かべて、
『ありがとう』
そう言った。
ゴードンはそのことがただただ嬉しくて。
ジョンを優しく抱きしめたのだった。
(…結局ジョンはすぐ宇宙ステーションに行っちゃって、ちゃんと返事を聞く事もできなかったけど…)
想いは伝える事ができた。
しかし、それきりふたりともどこか気恥ずかしくて通信もできなかった。
ようやく…逢えたのに…。
徐々に寂しさが悲しさに変わり、ゴードンは視界がぼやけてきたのに気がついた。
(ジョン…。やっぱり僕、フラれちゃったのかな…)
分かっていた。
だって僕らは男同士で兄弟で…。
ゴードン自身、はじめは自分の気持ちに驚いたものだ。
しかし、か細いジョンを、いつまでも守りたいと思った。
(いつもは冗談ばっかり言ってる僕だけど。…これだけは嘘じゃない)
涙にまみれた瞳はぐちゃぐちゃになり、それでも涙が止まることなく溢れ出て。
一通り泣き疲れたゴードンは、いつの間にか深い眠りに落ちていった。
*****************
「……ドン、ゴードン?」
それからしばらく後、ゴードンは自身を呼ぶ声に目覚めた。
どのくらい眠ってしまったのだろうか、もう、日が傾いている。
いや、そんな時間の経過よりも、ゴードンは現在自分のおかれている状況に気がつき、やがて驚いた。
「…ジョン!」
彼の兄ジョンが、ゴードンが寝ていた、そのベッドにいつの間にか腰掛けていたのだった。
「おはよう、ゴードン。いくらノックしても返事がなかったから、勝手に入らせてもらったよ」
そう言ってジョンがゴードンの好きなその表情で優しく微笑みかけると、
ゴードンは照れくさそうに「おはよう…」と伏せ目がちに答えた。
泣き続けていた跡を、悟られてしまっただろうか。
「どーしてここに来たの?」
さっきまで自室にこもって、自分の事をけむたがっていたジョンが、何故か自分の寝ていたベッドに腰掛けている。
ゴードンはすっかり眠気の覚めた眼をごしごしこすりながら、当たり前といえば当たり前の疑問を、ジョンにぶつけた。
「…どーしてって…」
そこまで言ってジョンは何かを取り出した。
「……これ!」
「へ?」
急に視界を青い紙袋にさえぎられ、ゴードンは素っ頓狂な声を出した。
「これ、ゴードンにプレゼント」
「プ、プレゼントって…」
突然のことに、ゴードンは事態を飲み込めなかった。
プレゼント?…ジョンが、僕に!?
とりあえず、袋を受け取れば、ゴードンの瞳に笑顔のジョンが映った。
「ゴードン、何をプレゼントしたら喜んでくれるか分からなかったからさ、帰ってきてからずっと考えてたんだ」
ああ、だから僕をけむたがっていたんだ…。
ゴードンはそう悟ると、ジョンに抱きついた。
「ありがとう、ジョン!ジョンからバレンタインにチョコレートもらえるなんて、思ってなかったから!」
そう、その日は2月14日…。
しかし、今度はそう言われたジョンが驚いた。
「え、バレンタイン??今日はゴードンの誕生日だろ…っておい!」
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その後、家族の準備していたゴードンの誕生日パーティーが盛大に催されたが、
当のゴードンはなぜか少々疲れ気味だったとか、そうでなかったとか。
END----
あとがき
…やってしまいました…。
というか中途半端…。
2004/1/24 なへめろ